今回指南するストーリーボードとは、報告書のストーリー立て、つまりシナリオの組み立て方である。それも難しい話ではない。結論から言ってしまえば、報告や提案はまず「結論から説明する」というただそれだけのことである。いたって簡単なことのようであるが、これが意外と実施されておらず、それによってとんでもない結末となってしまう報告会が実に多い。以降を読んでいただくと、「結論から説明する」という方法がいかに重要なことであるか理解いただけるはずである。 また、それがなぜ絶大な効果を発揮するかということも十分理解いただけるだろう。
難しさの本質
自分の頭の中にあるイメージを、そっくりそのまま他人の頭の中に再現することは非常に難しいことである。例えば、あなたが頭の中に何らかの風景を思い浮かべ、それを絵に描いたとする。そして、その絵を見せずに言葉で説明して、全く同じ絵を他人に描いてもらうとすると、これは至難の技である。あなたの説明がまずいと、相手は何度も絵を消しゴムで消して書き直さなければならないだろう。
例えば、あなたが図1に示すような風景を描いたとしよう。これを口や文章で相手に説明する。図1のような順序で説明したとしよう。このような順で話をした場合、相手は何回か消しゴムで絵を消して書き直すだろう。例えば、①番目に山を描いてから、⑤番目で山の山頂付近を消して雪を書き直す、④番目で湖の一部を消して船を描く、もしその船を手漕ぎボートだと思って描いたなら、⑥番目でヨットに書き直すといった具合である。
なぜこのようなことになるかと言うと、話や文字による情報伝は相手にシリアルにしか情報を送ることができない。図2に示す通り相手はそれを順番に受け取って自分の頭の中でイメージを組み立てて行く。このため情報の伝達順序を誤ると、こちらのイメージとは異なる形になって相手の頭の中に組み立てられる。
事実を忠実に伝えなければならない報告書においても、そのシナリオであるストーリーボードを誤ると、こちらの意図がうまく伝わらないだけではなく、予想しない方向に展開し議論が紛糾してしまう。多くの報告書や提案書、プレゼンテーションでは、こういった最も基本的なことで失敗している例が実に多いのである。